2026-09-27

クラウド利用80.6%|道具を足す前に、返事を待つ時間を数える

総務省の情報通信白書に、企業のクラウドサービス利用率が載っています。 2024年の時点で80.6%です。 10社のうち8社が、何かしらクラウドの道具を使っている状態です。

この数字だけ見ると、もう終わった話のように思えます。 実際、社内を見渡せば道具はあります。 会計はクラウドに入っています。 給与計算もそうです。 ファイルは共有フォルダにあります。 連絡はチャットです。 請求書はボタンを押せば出ます。

それでも、社長の手が空いた実感は薄い。 そういう話をよく聞きます。

道具の数が足りないわけではありません。 では、何が残っているのでしょうか。

朝、チャットを開きます。 「この見積、この金額で出していいですか」 「この件、こちらで進めてよいでしょうか」 「先方から日程変更の連絡が来ました。どうしますか」

どれも、返すのに30秒もかかりません。 問題は、社長がその画面を見る時刻です。 移動中です。 来客の合間です。 現場から戻ったあとです。

送られてから返るまでに、2時間空きます。 その2時間、その仕事は動いていません。 チャットの道具は新しいものです。 それでも、止まっている時間は同じだけ残っています。

そして、この2時間はどの請求書にも出てきません。 使ったお金として記録されないので、削る対象としても上がってきません。

もう1つあります。 道具を増やすと、道具をつなぐための待ち時間が生まれます。

たとえば、問い合わせに自動で返す道具を月1万7千円で契約します。 その道具と手元の台帳をつなぐために、別の道具を月3万円で契約します。 合わせて月4万7千円です。 これでできるのは、決まった文言を返すところまでです。 少し外れた質問は、やはり人が読んで打ちます。

お金は毎月出ていきます。 待ち時間は残っています。 道具が2つに増えたので、片方が止まったときに調べる場所も2つになりました。

ここで、数える対象を変えてみます。 道具の数ではなく、1つの仕事が誰かの返事を待って止まっていた時間を数えます。

申込が入ってから、最初の連絡が出るまでの時間。 見積の依頼から、金額が出るまでの時間。 現場から報告が上がってから、請求に回るまでの時間。

やってみると、たいていは作業そのものより待ち時間のほうが長いです。 作業は10分です。 待ちは半日です。

この待ち時間は、早く返すことでは消えません。 返す人が1人しかいないかぎり、その人が手を離せない間は必ず空きます。 返す速さを上げるのは、その人の休みを削ることと同じです。

消すには、返事が要らない形にします。

判断の基準を先に決めておきます。 この金額の範囲なら、確認なしで出す。 この条件に当てはまる日程変更なら、そのまま受ける。 この内容の問い合わせなら、この文面で返す。

基準の中にあるものは、社長を通らずに進みます。 基準から外れたものだけが、社長のところに上がります。

これは道具を選ぶ話ではありません。 決めごとを先に置く話です。 決めごとが無いまま道具を入れると、道具の前で人が待つ形になります。 その待ちは、道具を増やしても減りません。

決めごとが先にあれば、その次に道具が効きます。 基準が文章になっていれば、それをそのまま機械に渡せます。 渡した後は、社長がその場にいるかどうかと関係なく動きます。

新しい道具を検討する前に、1つだけ数えられることがあります。 先週、自分の返事を待って止まっていた仕事は何件あったか。 その何件かを見て、道具を入れれば消えるものか、基準を決めれば消えるものかを分けてみます。

たいていは後ろです。 そして後ろは、今日決められます。